「くしゃみをしたら尿が漏れた」「お風呂上がりにお湯が漏れる」「下腹部がぽっこり出てきた」
浜松市・女性専門の大腸肛門科/女医が解説
年のせいだから、と
あきらめないでください。
骨盤底筋は、臓器を下から支えているハンモックのような筋肉です。目に見えない場所にあるため意識されにくいのですが、何歳からでも鐃えられる筋肉です。緩むと何が起こるのか、鐃えると何が変わるのかを、順にご説明します。
この記事のまとめ
- 骨盤底筋(こつばんていきん)は、膣を支え・排泄をとめる・姿勢を保つ筋肉です
- 緩むと、尿もれ・便もれ・ガス漏れ・骨盤臓器脱といった変化が起こることがあります
- 鐃えると、漏れの回数が減る・おならを我慢しやすくなるなどの変化が期待できます
- 効果を感じるまでの目安は約2〜3か月。やりすぎより続けることが大切です
これらは年齢のせいだけではありません。実は、骨盤の底にある「骨盤底筋(こつばんていきん)」の衰えが原因かもしれません。
静岡県浜松市の女性専門クリニック「Aico レディースクリニック」が、女性にとって最も重要な筋肉の一つである骨盤底筋について、その役割とケアの必要性を詳しく解説します。
そもそも「骨盤底筋」とは?
骨盤底筋とは、その名の通り骨盤の底(出口)にある筋肉の集まりのことです。 恥骨(前)から尾骨(後ろ)、そして左右の坐骨の間にハンモックのように張り巡らされており、膀胱、子宮、直腸といった大切な臓器を支えています。
読み方と、体のどこにあるのか
「こつばんていきん」と読みます。骨盤底筋群と呼ばれることもあり、実際にはいくつかの筋肉の集まりです。前は恥骨、後ろは尾骨、左右は坐骨——この四隅に張られたハンモックのような形を思い浮かべてください。
このハンモックが、膀胱・子宮・直腸を下から支えています。そして真ん中には尿道・膣・肛門という3つの出口が通っており、その開け閉めもこの筋肉が担当しています。支えることと、閉じること。この2つを同時にこなしている場所です。
主な3つの役割
- 臓器を支える:膀胱、子宮、直腸が下がらないように正しい位置に保ちます。
- 排泄のコントロール:尿道や肛門を締めたり緩めたりして、尿や便、ガスの排出をコントロールします。
- 姿勢の安定:体幹(インナーマッスル)の一部として、姿勢を安定させます。
なぜ骨盤底筋は衰えるの?
骨盤底筋は、以下のようなライフイベントや習慣によってダメージを受けたり、緩んだりしやすい筋肉です。
- 妊娠・出産:胎児の重みや、分娩時のダメージ(会陰裂傷や神経の伸展)により、筋肉や神経が傷つきます。
- 加齢・閉経:年齢とともに筋力は低下します。特に閉経後は女性ホルモンの減少により、組織が弾力を失います。
- 生活習慣:便秘での強いいきみ、長時間のデスクワーク、運動不足、姿勢の悪さなども原因となります。
| 原因 | なぜ負担になるのか |
|---|---|
| 妊娠・出産 | おなかの重みが長期間かかり、分娩で会陰や神経が引き伸ばされます。もっとも影響の大きい要因です |
| 加齢・閉経 | 女性ホルモンが減ると、筋肉や支える組織の弾力が落ちていきます |
| 慢性の便秘 | 排便のたびに強くいきむことが、繰り返しの負担になります |
| 体重の増加 | おなかの中の圧力が高い状態が続きます |
| 長引く咳 | 喘息や喫煙による咳は、瞬間的に強い圧力をかけます |
| 重いものを扱う | 仕事や運動で日常的に腹圧をかける習慣があると負担になります |
| 長時間の座位・運動不足 | 使われない筋肉は少しずつ働きが落ちます |
骨盤底筋が緩むとどうなる?衰えのサイン
骨盤底筋が弱まると、支えきれなくなった臓器や機能に様々な不調が現れます。
尿漏れ(腹圧性尿失禁・切迫性尿失禁)
咳やくしゃみ、重いものを持った瞬間に尿が漏れる「腹圧性尿失禁」は、骨盤底筋の緩みが主な原因です。40歳以上の女性の4割以上が経験していると言われています。
便漏れ・ガス漏れ
「下着に少し便がつく」「我慢できずにガスが出てしまう」。これらは肛門括約筋や骨盤底筋の低下が原因で起こる「便失禁」の可能性があります。
骨盤臓器脱(こつばんぞうきだつ)
支えを失った膀胱、子宮、直腸が膣から体外へ出てきてしまう病気です。股間にピンポン玉のようなものが触れたり、何かが挟まっているような違和感を感じたりします。
セルフチェック
次の項目に思い当たるものがないか、確かめてみてください。
- くしゃみ・咳・笑ったときに尿がもれる
- 重いものを持ち上げた瞬間にもれる
- トイレが近い、急に我慢できなくなる
- 入浴後にお湯が出てくる感じがある
- おならを我慢しにくい、意図せず出てしまう
- 下着に少し便がつくことがある
- 股のあたりに何かが下がってくる感じがする
- 便が出きらない感じが残る
ひとつでも当てはまれば、骨盤底筋の衰えが関わっている可能性があります。ただし、これらの症状は膀胱や直腸、婦人科の病気が原因のこともあります。チェックはあくまで目安とお考えください。
骨盤底筋を鍛えるとどうなる?
「鍛えると何が変わるのか」がいちばん気になるところだと思います。期待できる変化を正直にお伝えします。
| 期待できること | 補足 |
|---|---|
| 尿もれの回数が減る | 咳やくしゃみでもれるタイプ(腹圧性)では、トレーニングが最初に行う対処法とされています |
| おならや便を我慢しやすくなる | 肛門まわりの筋肉と連動しているためです |
| 骨盤臓器脱の進行をおさえる | 軽い段階であれば、下がってくる感じがやわらぐことがあります |
| 排便が安定する | いきむ力の使い方が整い、残便感がやわらぐことがあります |
| 姿勢が安定する | おなかや背中の深い筋肉と連動して働くためです |
効果が出るまでの目安
筋肉のトレーニングですので、数日では変わりません。おおむね2〜3か月続けたところで変化を感じる方が多いとされています。途中でやめてしまうと元に戻りますので、毎日少しずつのほうが結果につながります。
鍛えると痩せますか?
骨盤底筋そのものは小さな筋肉ですので、鍛えたことで体重が落ちるという性質のものではありません。ただし、骨盤底筋が働くようになると姿勢が安定し、下腹部のぽっこりした見た目が変わったと感じる方はいらっしゃいます。
正しい鍛え方
まずは、いちばん感覚をつかみやすい仰向けの姿勢から始めてください。
- 仰向けに寝て、両膝を立てます。おなかの力を抜きます。
- 息を吐きながら、おしっこを途中で止めるように、肛門と膣を体の内側へ引き上げます。
- そのまま5秒キープします。息は止めないでください。
- ゆっくり10秒かけて力を抜き、完全にゆるめます。
- これを10回で1セット。1日2〜3セットが目安です。
大切なのはおなか・太もも・おしりに力が入っていないことです。手をおなかに当てて、硬くならないか確かめながら行ってください。慣れてきたら、座った姿勢や立った姿勢でもできるようになります。信号待ちや歯みがきの時間など、決まった場面と結びつけると続けやすくなります。
うまくできない・やりすぎが心配なとき
締める感覚がわからない
骨盤底筋は目に見えず、日ごろ意識しない筋肉ですので、最初から感覚をつかめる方のほうが少ないくらいです。うまくいかないときは、おならを我慢するときの感じを思い出してみてください。それがいちばん近い動きです。
なお、実際の排尿の途中で尿を止めて確認する方法は、感覚をつかむ手がかりにはなりますが、習慣にしないでください。膀胱に尿が残りやすくなり、かえって不都合が起こることがあります。
やりすぎるとどうなりますか
筋肉ですので、使いすぎれば疲れます。回数を大幅に増やしたあとに、骨盤の底や股のあたりに重さ・痛みを感じる場合は、いったん休んでください。強く長く締めることより、しっかりゆるめることのほうが実は大切です。緊張したままの骨盤底筋も、不調のもとになります。
おしり・排便との深い関係
骨盤底筋は、尿道だけでなく肛門括約筋とも一体になって働いています。そのため、骨盤底筋の衰えは、尿の問題だけでなく、おならがもれる・下着に便がつく・拭いても残る感じがするといった症状として現れます。
出産で会陰が傷ついた方や、痔の治療歴のある方は、この部分の働きが落ちていることがあります。当院は肛門を専門に診る大腸肛門科ですので、括約筋の締まりまで含めて評価することができます。尿もれで泌尿器科に、便もれで内科に、と分かれてしまいがちな悩みを、まとめてご相談いただけます。
関連コラム:産後の便もれ・ガス漏れはなぜ?原因と治し方
今すぐ始めたい「骨盤底筋ケア」の必要性
骨盤底筋は筋肉ですので、腕や足の筋肉と同じように、何歳からでも鍛えることができます。 トレーニングを継続することで、尿漏れや便漏れの改善が期待できるだけでなく、将来の臓器脱の予防、さらには冷えの改善や姿勢の改善にもつながります。
Aicoレディースクリニックからのメッセージ
「恥ずかしいから」と誰にも言えずに悩んでいませんか? 骨盤底筋のトラブルは、女性なら誰にでも起こりうる生理的な変化です。当院では、正しいトレーニング指導や、最新機器を用いた治療を行っています。 10年後、20年後も笑顔で過ごすために、今から「骨盤底筋ケア」を始めましょう。
よくあるご質問
骨盤底筋が弱っているか、自分で判断できますか?
「くしゃみで尿がもれる」「入浴後にお湯が出てくる感じがする」「ガスを我慢しにくい」「下腹部に違和感がある」などは、衰えのサインのひとつです。ただし、これらの症状には膀胱・直腸・婦人科の病気が隠れていることもありますので、続く場合は自己判断で済ませず、一度ご相談ください。
骨盤底筋のトラブルは、何歳くらいから起こりますか?
更年期以降だけの問題ではありません。産後の方や、便秘・長時間の座り仕事が続く方にも起こります。「まだ若いから大丈夫」と思っていても、妊娠・出産や生活習慣の影響で早い段階から症状が出ることがあります。軽い違和感のうちに始めるほうが、のちのち楽です。
骨盤底筋トレーニングは、自宅でもできますか?
できます。ただし骨盤底筋は意識しにくい筋肉で、自己流だとおなかや太ももに力が入ってしまい、狙った筋肉が働いていないことが少なくありません。最初に正しいやり方を確認してから始めることをおすすめします。
効果が出るまで、どのくらいかかりますか?
おおむね2〜3か月続けたところで変化を感じる方が多いとされています。数日では変わりませんし、やめれば元に戻ります。回数を増やすことよりも、少しずつ毎日続けることを優先してください。
産後はいつから始められますか?
体の回復を待ってから、無理のない範囲で始めていただけます。悪露が続いている時期や、傷の痛みが強い時期は控えてください。会陰に傷がある場合や、尿もれ・便もれがある場合は、始める前に一度診てもらうと安心です。
排尿の途中で尿を止める方法で鍛えてもいいですか?
感覚をつかむための確認としては役立ちますが、習慣にはしないでください。繰り返すと膀胱に尿が残りやすくなり、かえって不都合が起こることがあります。確認は一度きりにして、練習はトイレ以外の場所で行ってください。
トレーニングをやりすぎることはありますか?
あります。急に回数を増やしたあとに、骨盤の底や股のあたりに重さや痛みが出たときは、いったん休んでください。強く締めることよりも、しっかりゆるめることのほうが大切です。緊張したままの骨盤底筋も、不調のもとになります。
骨盤底筋を鍛えると痩せますか?
骨盤底筋は小さな筋肉ですので、鍛えたことで体重が落ちるという性質のものではありません。ただし姿勢が安定するため、下腹部の見た目が変わったと感じる方はいらっしゃいます。
尿もれだけでなく、便もれやガス漏れも骨盤底筋が関係しますか?
関係します。骨盤底筋は肛門括約筋と一体になって働いており、排泄のコントロールに深く関わっています。働きが弱くなると、便もれ・ガス漏れ・拭いても残る感じといった症状が出ることがあります。恥ずかしくて相談しづらい症状ですが、放置せず早めにご相談ください。
男性にも骨盤底筋はありますか?
あります。男性でも、前立腺の手術後などに尿もれの対策として行われます。ただし当院は女性専門の大腸肛門科ですので、男性の診療は行っておりません。
受診するとき、どんなことを相談すればいいですか?
「どんなときにもれるか(くしゃみ・運動・我慢できないなど)」「いつ頃からか」「頻度」「出産歴」「便秘の有無」「生活で困っていること」をお伝えいただくと、原因の見極めに役立ちます。うまく説明できなくても大丈夫です。女性医師・女性スタッフがお話をうかがいます。
セルフケアだけで足りないと感じたら
自分で続けてみても変わらない、そもそも締める感覚がつかめない——そうした場合は、外から筋肉に働きかける方法もあります。当院では、服を着たまま座っているだけで骨盤底筋に働きかける機器や、専門スタッフによるトレーニング指導をご用意しています。まずはご相談ください。
この記事の監修
Aico(あいこ)レディースクリニック 院長 医学博士
- 日本外科学会 専門医・指導医
- 日本大腸肛門病学会 専門医・指導医・評議員
- 日本臨床肛門病学会 専門医・指導医
- 日本消化器外科学会 専門医・指導医
- 日本女性骨盤底医学会
- 日本がん治療認定医
「あれっ?」と感じたら
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、症状や治療効果には個人差があります。気になる症状がある場合は医師にご相談ください。


























