| ちょっとためになるおしりの話 |
浜松市・女性専門の大腸肛門科/女医が解説
その「ピラピラした皮」は、
腫瘍ではありません。
お風呂やトイレのあと、肛門に柔らかいたるみを見つけて不安になる方はとても多くいらっしゃいます。その多くはスキンタグ(肛門皮垂)という、過去の痔の名残です。放置していいのか、取るべきなのか、順にご説明します。
この記事のまとめ
- スキンタグ(肛門皮垂)は腫瘍ではなく、切れ痔やいぼ痔が治ったあとの皮膚のたるみです
- 自然に小さくなることはありません。軟膏でも縮みません
- 痛み・かゆみ・拭きにくさがなければ、放置して問題ありません
- 取るなら日帰りの小手術です。ただし原因の便秘やいきみを直さないと再発します
お風呂に入っている時や、トイレの後でふとお尻を触ってみたら… 「あれ?何かピラピラした軟らかいものがある?」 痛みも出血もないけれど、この突起物はいったい何!?
そんな不安を抱えて来院される患者様の多くに見られるのが、「肛門皮垂(こうもんひすい)」、別名「スキンタグ」と呼ばれるものです。 今回は、この正体不明の「できもの」について、原因や治療の必要性について詳しくお話しします。
肛門皮垂(スキンタグ)の正体とは?
読んで字のごとく、肛門の皮膚が伸びて「たるんだ皮」のことです。 腫瘍や悪い病気ではなく、過去の肛門トラブルの「名残(なごり)」や「傷跡」のようなものと言えます。
なぜできるの?主な2つの原因
1. 切れ痔(裂肛)の繰り返し
硬い便を無理に出そうとして肛門が切れると、体は傷を治そうとして周囲の皮膚を盛り上げます。 「切れる→治る→腫れる」を何度も繰り返しているうちに、炎症を起こした皮膚が伸びてしまい、たるみとなって残ってしまいます。これを「見張りイボ」と呼ぶこともあります。
2. いぼ痔(痔核)の脱出
排便時に強くいきむことで、中にあるいぼ痔が外に飛び出す(脱肛)ことがあります。 風船が膨らんで萎んだ後に皮がシワシワになるのと同じように、脱肛を繰り返すことで肛門の皮膚が引き伸ばされ、たるみが生じます。
いぼ痔・その他のできものとの見分け方
ご自身で触っただけでは、何があるのか判断するのは難しいものです。見た目が似ていても、治療がまったく変わります。
| 状態 | 触った感じ・特徴 |
|---|---|
| スキンタグ(肛門皮垂) | 柔らかい皮のたるみ。押しても痛くない。大きさが日によって変わらない。 |
| いぼ痔(外痔核) | ふくらみがあり、排便後やいきんだあとに大きくなる。しばらくすると小さくなる。 |
| 血栓性外痔核 | ある日突然できる硬いしこり。強く痛む。青紫色に見えることがある。 |
| 脱出した内痔核 | 排便時に出てきて、あとで戻る(または戻らない)。粘膜なので湿っている。 |
| それ以外 | 粉瘤、性感染症によるいぼなど。数が増える、じくじくする場合は要確認です。 |
「数が増えている」「急に大きくなった」「じくじくして汁が出る」といった変化があるときは、スキンタグ以外のものが加わっている可能性があります。この場合は早めに診てもらってください。
自然に小さくなりますか?
残念ながら、一度伸びてしまった皮膚が自然に元へ戻ることはありません。市販の軟膏や坐薬を使っても、たるみそのものが縮むことはないとお考えください。
ただし「前より小さくなった気がする」と感じることはあります。これは、まわりに炎症や腫れがあった時期を過ぎて、本来の大きさに戻っただけというケースがほとんどです。
逆に「大きくなった」と感じるときは、スキンタグ自体が育ったのではなく、いぼ痔が新しく腫れたり、血栓ができたりしていることが多くあります。痛みをともなう変化は、別のことが起きているサインです。
治療は必要?切除すべき?
ここが一番気になるところですよね。 結論から言うと、「悪さをしていないなら、放置しても全く問題ありません」。 肛門皮垂そのものは病気ではありませんし、癌化することもありません。
治療(切除)を検討するケース
ただし、軟膏を塗っても皮膚のたるみが縮まることはありません。以下のような悩みがある場合は、日帰り手術での切除も選択肢に入ります。
- 衛生面:排便後にきれいに拭き取れず、下着が汚れる、かゆみの原因になる。
- 違和感:座った時に気になったり、挟まる感じが不快。
- 見た目:整容面(見た目)がどうしても気になる。
切除手術について(方法・費用・術後)
切除する場合は、日帰り手術になります。当院では局所麻酔に鎮静剤を併用し、眠っているようなリラックスした状態で行います。たるんだ皮膚を切り取る処置で、施術時間は短く、その日のうちにご帰宅いただけます。入院は必要ありません。
費用の目安
保険診療です。肛門の手術は3割負担で約2,000〜50,000円と幅があり、切除の範囲や内容によって変わります。事前の診察で、ご自身の場合いくらになるかをご説明します。詳しくは料金表もご覧ください。
術後の経過で知っておいてほしいこと
ここは、手術を決める前に必ず知っておいていただきたい部分です。傷そのものは小さくても、肛門は毎日便が通る場所です。そのため、皮膚を切った傷が落ち着くまでには一般に数週間かかり、その間は排便のたびに痛みや少量の出血があります。経過には個人差があります。
つまり「取れば翌日から快適」というものではありません。今まったく症状がない方が見た目だけを理由に切除すると、しばらくのあいだ手術前より不快な期間を過ごすことになります。当院が「悪さをしていないなら急いで取らなくてよい」とお伝えしているのは、このためです。
「手術してくれない」と言われた方へ
他の医療機関で相談したが取ってもらえなかった、というご相談をいただくことがあります。断られる理由の多くは、次のどちらかです。
- 症状がなく、取ることで得られる利益より、術後のつらさのほうが大きいと判断された
- 見た目の改善が主な目的で、保険診療の対象とするか判断が施設によって分かれる
当院では、まず今のたるみが実際に生活の邪魔をしているかを一緒に確認します。拭き残しが気になる、かゆみやかぶれを繰り返す、下着に擦れて痛い——こうした具体的な困りごとがあるなら、切除を検討する理由になります。
一方で、症状がまったくない場合は、正直に「今は様子を見たほうがよい」とお伝えすることもあります。できること・できないことを、その場ではっきりお話しします。まずは今の状態を確認するところから始めてください。
知っておいてほしい「再発」のリスク
もし切除してきれいにしたとしても、根本的な原因である「便秘」や「いきみ」「切れ痔」を繰り返してしまうと、また皮膚が伸びて新たな皮垂ができてしまう可能性があります。 「一度切れば一生できない」というものではないことを知っておいてください。
まずは「正体」を確認しましょう
ご自身で触った感覚では「すごく大きなできものがある!」と感じていても、実際に診察してみるとごく小さな皮垂だった、ということもよくあります。 また、通常時はお尻の割れ目に隠れて目立たないことも多いです。
「悪いものではないか確認したい」「邪魔だから取りたい」など、まずは一度、専門医に見せてみませんか? 当院では、患者様のご希望を最優先に考え、無理に手術を勧めることはいたしません。女性医師と一緒に、あなたにとってベストな選択を考えましょう。
よくあるご質問
痛みはないのですが、これはがんの可能性がありますか?
痛みや出血がなく、長いあいだ大きさが変わらない柔らかいものであれば、スキンタグ(肛門皮垂)の可能性が高く、良性のものです。ただし、ご自身で皮垂だと思っていたものが別の病気だったというケースもまれにあります。安心のためにも一度確認を受けてください。
市販の痔の薬を塗れば、このたるみは消えますか?
消えません。一度伸びた皮膚は、軟膏や飲み薬では小さくなりません。腫れや炎症があるときは薬でその部分は引きますが、皮膚のたるみそのものは残ります。なくしたい場合は切除が必要です。
自然に小さくする方法はありますか?
残念ながらありません。マッサージや市販薬で縮むこともありません。ただし、便秘やいきみを改善すると新しいたるみが増えるのを防げますので、そこは大きな意味があります。
気になるので取りたいです。手術は大変ですか?
日帰りで受けていただけます。局所麻酔に鎮静剤を併用し、眠っているようなリラックスした状態で行います。施術時間は短く、その日のうちにご帰宅いただけます。ただし肛門は毎日便が通る場所なので、傷が落ち着くまでは数週間かかり、その間は排便のたびに痛みや少量の出血があります。
手術の費用はどのくらいですか?
保険診療です。肛門の手術は3割負担で約2,000〜50,000円と幅があり、切除の範囲や内容によって変わります。ご自身の場合いくらになるかは、事前の診察でご説明します。
取っても、またできてしまうことはありますか?
あります。スキンタグの原因の多くは便秘やいきみによる切れ痔・いぼ痔です。手術できれいにしても、排便の習慣が変わらなければ新しいたるみができます。当院では手術だけでなく、繰り返さないための排便コントロールもあわせてご提案します。
そもそも、なぜスキンタグができるのですか?
主な原因は2つです。硬い便で肛門が繰り返し切れると、体が傷を治そうとして皮膚を盛り上げ、それが残ります。もう一つは、いぼ痔が腫れて外に出た状態が続き、腫れが引いたあとに皮膚だけがたるんで残るケースです。
出産のあとにできたのですが、関係ありますか?
関係します。妊娠中の便秘と、分娩時の強いいきみで、いぼ痔ができたり肛門が切れたりしやすくなります。その名残としてスキンタグが残る方は少なくありません。産後によく見られる経過です。
他院で手術してもらえませんでした。診てもらえますか?
ご相談ください。症状がない場合に「今は取らないほうがよい」と判断されることは実際にあります。当院では、拭き残し・かゆみ・かぶれ・擦れる痛みといった具体的な困りごとがあるかを確認したうえで、できること・できないことを正直にお伝えします。
女性の医師に診てもらえますか?
はい。当院は患者さまもスタッフも全員が女性の大腸肛門科です。診察も処置も女性医師が行い、待合室で男性と顔を合わせることもありません。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。症状や治療の効果には個人差がありますので、気になる症状がある場合は医師にご相談ください。
監修
Aico(あいこ)レディースクリニック 院長 相川 佳子
日本大腸肛門病学会 専門医・指導医・評議員/日本臨床肛門病学会 専門医・指導医/日本外科学会 専門医・指導医
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、症状や治療効果には個人差があります。気になる症状がある場合は医師にご相談ください。




























