| ちょっとためになるおしりの話 |
浜松市・女性専門の大腸肛門科/女医が解説
そのかゆみ、
「洗いすぎ」かもしれません。
おしりのかゆみで悩む方の多くが、清潔にしようと洗い、拭き、薬を塗っています。ところが肛門掻痒症では、その努力そのものがかゆみを長引かせていることが少なくありません。誰にも聞けないこの症状を、順にご説明します。
この記事のまとめ
- おしりのかゆみの多くは肛門掻痒症(こうもんそうようしょう)です
- 最大の原因は洗いすぎ・拭きすぎという「よかれと思ったケア」です
- おしりだけに出るブツブツは、蕁麻疹ではなく汗や摩擦による湿疹のことが多くあります
- 市販のステロイドを自己判断で塗り続けるとかえって治りにくくなります
肛門掻痒症(こうもんそうようしょう)とは
肛門のかゆみのほとんどがこれです。 これは、アトピー性皮膚炎や蕁麻疹のような皮膚の疾患がないにも関わらずかゆみが出現する疾患です。 掻いたり、吹きすぎることで、傷ができて、痛みや出血の原因となることもあります。また、繰り返す症状により、肛門周りの皮膚の色が変わったり、皮膚が硬くなってできものができたと感じることもあります。また、掻きすぎて、色素沈着が起こり、お尻周りが黒ずんで、シミができたと感じる方もいます。
肛門掻痒症は、肛門そう痒症・肛門周囲掻痒症などとも書かれ、「こうもんそうようしょう」と読みます。特別な病気ではなく、女性にも男性にもよくみられる、ありふれた状態です。
こんな症状はありませんか
- 夜、布団に入って体が温まると、無性にかゆくなる
- 家に帰ってほっとした時間にかゆみが強くなる
- がまんできずに掻いてしまい、あとでヒリヒリする
- 下着に汚れや汁がつく
- 皮膚がゴワゴワと硬くなってきた
- 色が濃くなってきた
かゆみが夜や、リラックスした時間帯に強くなるのは、この症状の特徴のひとつです。日中は気にならないのに夜だけつらい、というのは珍しいことではありません。
肛門掻痒症の原因は?「過剰衛生」と「便通異常」
過剰衛生。つまり、きれいにしすぎること。 洗い過ぎ、拭きすぎ、おしりふきなどのケア用品によって皮脂膜が無くなり、皮膚バリアー機能が低下すると、かゆみを選択的に伝える神経線維が皮膚表面まで伸びてきて増殖します。つまりかゆみを感じやすい皮膚になってしまいます。 そもそも、根底には、便通異常があることが多いです。便秘でお尻を刺激したり、下痢で便の切れが悪く、何回も拭いたり。 快食快便が大事ですね。
| 原因 | よくあるきっかけ |
|---|---|
| 洗いすぎ・拭きすぎ | 温水洗浄便座の長時間使用、石けんでの洗浄、強くこする |
| 便通の異常 | 下痢・軟便で便が付着する/便秘でいきむ |
| むれ・摩擦 | 長時間の着座、通気性の悪い下着、ナプキンやおりものシート |
| 痔などの肛門の病気 | いぼ痔・切れ痔・肛門ポリープ・分泌物 |
| 皮膚の病気 | 湿疹、接触皮膚炎、カビ(カンジダ・白癬) |
| 全身の状態 | アトピー体質、糖尿病、内服薬の影響 |
| 食べもの・飲みもの | 香辛料、カフェイン、アルコール、柑橘類 |
「洗いすぎ」がかゆみを生む仕組み
皮膚の表面はうすい皮脂の膜で守られています。石けんでよく洗う、温水洗浄便座を長く当てる、紙で強くこする——こうした行為はその膜を落としてしまいます。守りを失った皮膚は乾燥し、わずかな刺激でもかゆくなります。かゆいのでまた洗う。清潔にしようとする努力そのものが、かゆみを育てているという状態です。
温水洗浄便座(ウォシュレット)との付き合い方
使ってはいけないということではありません。問題になるのは強い水流・長い時間・毎回の使用です。目安として、水勢は弱く、10秒程度まで。洗浄後は乾いた紙で押さえるように水分を取ってください。こすらないことが大切です。
便通が関わっている場合
軟便や下痢が続くと、ごく少量の便が肛門のまわりに残りやすくなります。この便に含まれる消化酵素が皮膚を刺激します。反対に便秘でいきむ習慣があると、痔ができて分泌物が出るようになり、それがかゆみにつながります。かゆみの治療は、便の形を整えるところから始まると考えてください。
おしりだけに蕁麻疹のようなブツブツが出る
「おしりに蕁麻疹ができた」というご相談は非常に多く、実際にインターネットでもよく検索されています。ただ、診察してみると本当の蕁麻疹であることは多くありません。おしりという場所の性質上、まったく別のものが蕁麻疹に見えているケースがほとんどです。
蕁麻疹は、出たり消えたりを繰り返し、ひとつのふくらみは数時間から長くても1日以内に跡形もなく消えるのが特徴です。一方、おしりに出るブツブツの多くは、汗や摩擦、下着やナプキンの刺激による湿疹(あせも・接触皮膚炎)で、同じ場所に居座り、掻くとさらに広がります。
| 蕁麻疹 | 湿疹・かぶれ | |
|---|---|---|
| 出ている時間 | 数時間〜1日で消える | 数日〜数週間続く |
| 場所 | 日によって移動する | 同じ場所に出続ける |
| 跡 | 消えたあとは残らない | 色素沈着や皮むけが残る |
| おしりだけか | 全身のどこにでも出る | 座る面・下着の当たる面に集中 |
おしりだけに繰り返し出る場合は、長時間座っている、通気性の悪い下着やナプキン・おりものシートを長く当てている、といった日常の条件が関わっていることがよくあります。
アトピー性皮膚炎とおしりのかゆみ
アトピー性皮膚炎の方から「おしりや肛門のまわりもかゆい」というご相談を受けることは少なくありません。もともと皮膚のバリア機能が弱いため、洗いすぎ・拭きすぎの影響をより強く受けてしまうためです。
注意していただきたいのは、肛門のまわりは体の皮膚とは条件が違うという点です。皮膚が薄く、湿気がこもり、排便のたびに刺激を受けます。体に使っている塗り薬をそのままおしりに使い続けると、かえって皮膚が薄くなったり、カビ(カンジダ)が増えたりすることがあります。
全身のアトピーの治療は皮膚科で続けていただきながら、おしりの部分だけを別に診てもらうという考え方をおすすめしています。
掻き続けると起こること
かゆみそのものより問題なのが、掻いてしまうことによる二次的な変化です。掻く→皮膚が傷つく→よけいにかゆくなる、という悪循環に入ります。
- 色素沈着…摩擦の刺激で色が濃くなります。「肛門の黒ずみ」を気にして来院される方の多くがこれです。
- 皮膚が厚く硬くなる…長く掻き続けた皮膚はゴワゴワと硬くなり、かゆみを感じやすい状態が固定してしまいます。
- ひび割れ・出血…下着に血がつくことがあり、痔と間違われることもあります。
- 感染…傷から細菌やカビが入り、症状が長引きます。
色素沈着は、掻くことをやめて皮膚が落ち着けば、時間をかけて薄くなっていくことが多いものです。まずはかゆみを断つことが先決です。
自然に治りますか?繰り返すのはなぜ?
「肛門掻痒症は自然治癒しますか」というご質問をよくいただきます。答えは原因が続いているかどうか次第です。洗いすぎや便通の乱れといった原因が毎日続いている限り、自然に治ることはあまり期待できません。逆に、そこを断つことができれば、比較的短い期間で落ち着く方も多くいらっしゃいます。
よくなったのに、また戻ってしまう理由
- 落ち着いた時点でケアをやめてしまい、また洗いすぎに戻っている
- 塗り薬に頼っていて、原因そのものが手つかずのまま
- 痔・カンジダ・皮膚疾患など、別の病気が背景に隠れている
- 食べ物や飲み物(香辛料・カフェイン・アルコールなど)が刺激になっている
治し方は?排便コントロールと正しいケア
治療の柱はふたつだけです。便の形を整えることと、皮膚をいじりすぎないこと。薬はこのふたつを助けるために使います。順番にご説明します。
今日から変えられる4つのこと
- 洗う回数と強さを減らす…石けんは使わず、ぬるま湯でやさしく。温水洗浄便座を使うなら弱い水勢で10秒程度までにします。
- こすらず、押さえて拭く…紙でこすらないでください。押し当てて水分を取るだけで十分です。
- むれを減らす…綿など通気性のよい下着に。ナプキンやおりものシートは長時間当てたままにせず、こまめに替えます。
- 便をやわらかすぎず硬すぎない形に…食物繊維と水分、必要に応じて整腸剤や漢方薬などを使います。
- 排便コントロール
まずは第一に。ここが整わないと再発を繰り返します。 - 軟膏による治療
- 正しい肛門のお手入れ
- 洗いすぎない:温水便座はなるべく使用を控えましょう。入浴時も石けんでゴシゴシは大敵です。
- 拭きすぎない トイレットベーパーで優しく押さえ拭きを。きれいにならないのは便がすっきりで出ていないのが原因
- お尻ふきウェットティッシュは使用しない :赤ちゃん用ならお尻にいいのではと思っていらっしゃることが多いですが、かぶれの原因になったり、お尻を洗ったときと同じような現象が起こり、かつ、拭き取りのこすり刺激がお尻には負担になります。
- お尻の消毒は禁忌:消毒によるかぶれ、また皮膚のバリア機能をつくってくれる大切な常在菌も殺してしまいます。
市販薬とステロイド軟膏の使い方
かゆみが強いと、まず市販の軟膏を試される方がほとんどです。短期間で症状が落ち着くのであれば問題ありませんが、効かないまま塗り続けること・強い薬を長く使い続けることは避けてください。
ステロイドは「短く効かせて、やめる」薬です
ステロイド外用薬はかゆみを抑える力が強く、適切に使えば頼りになります。ただし肛門のまわりは皮膚が薄く、薬が効きやすい部位です。強いものを長期間使うと、皮膚が薄くなる、毛細血管が浮き出る、カビ(カンジダ)が増えるといった変化が起こり、かえってかゆみが取れにくい状態になることがあります。
市販薬の中にはステロイドが入っているものと入っていないものがあり、成分表示だけで見分けるのは簡単ではありません。「2週間ほど使っても変わらない」「やめるとすぐ戻る」という場合は、自己判断を続けずに一度ご相談ください。
保湿はかゆみ対策になります
乾燥がかゆみの原因になっている場合、保湿剤で皮膚を守るだけで楽になる方がいます。白色ワセリンなど刺激の少ないものを、洗ったあとの清潔な状態で薄く塗ります。ただし、じくじくしている・カビが疑われる状態では逆効果になることもあるため、状態に合わせた選択が必要です。
皮膚科と肛門科、どちらにかかる?
「こうもんそうようしょうは何科ですか」というご質問も多くいただきます。どちらでも診てもらえますが、目安は次のとおりです。
| こんなとき | おすすめ |
|---|---|
| 全身にも湿疹やアトピーがある | 皮膚科 |
| おしりだけがかゆい | 肛門科(大腸肛門科) |
| 排便のときに出血・痛みがある | 肛門科 |
| いぼ痔・切れ痔を指摘されたことがある | 肛門科 |
| 皮膚科の薬を使っても戻ってしまう | 肛門科 |
おしりのかゆみは、痔や排便の状態と切り離せないことが多くあります。肛門の中まで診ることができるのは肛門科です。皮膚の表面だけを見ていても原因にたどりつかない場合は、一度肛門科でご相談ください。
関連ページ:肛門科の診療について
こんなときは受診をおすすめします
- 市販薬を2週間ほど使っても変わらない、またはやめると戻る
- 出血がある、下着に血や汁がつく
- かゆいところにしこりやできものがある
- 皮膚が硬くなってきた、色が濃くなってきた
- 夜眠れないほどかゆい
- 排便のときに痛みがある、便がもれる
なかなか治らないかゆみは専門医へ
肛門掻痒症以外にも、肛門のかゆみを引き起こす病気はたくさんあります。 なかなか直らないかゆみ、繰り返すかゆみがある場合は、一度専門医を!
「こんなことを聞いてもいいのかな?」といったご質問も、女性スタッフが親身に対応いたします。WEB予約、または電話予約にて、まずはお気軽にお問い合わせください。おしりの悩みを解決して、あなたの安心空間を取り戻しましょう!
よくあるご質問
肛門掻痒症は自然に治りますか?
原因が続いているかどうかによります。洗いすぎや便通の乱れがそのままであれば、自然に治ることはあまり期待できません。逆に、洗い方と便の形を整えるだけで落ち着く方も多くいらっしゃいます。
おしりに蕁麻疹のようなものが出ています。蕁麻疹でしょうか?
実際に蕁麻疹であることは多くありません。蕁麻疹は数時間から1日以内に跡形なく消え、出る場所も移動します。おしりの同じ場所に出続けるものは、汗や摩擦、下着の刺激による湿疹であることがほとんどです。
何科を受診すればいいですか?
全身にも湿疹がある場合は皮膚科、おしりだけがかゆい場合や出血・痛みを伴う場合は肛門科をおすすめします。おしりのかゆみは痔や排便の状態と関わっていることが多く、肛門の中まで診られるのは肛門科です。
温水洗浄便座(ウォシュレット)は使ってはいけませんか?
使ってはいけないということではありません。問題になるのは強い水流と長い使用時間です。水勢は弱く、10秒程度までを目安にし、洗浄後は押さえるように水分を取ってください。
市販のかゆみ止めを使い続けても大丈夫ですか?
短期間で落ち着くのであれば構いませんが、効かないまま塗り続けることは避けてください。肛門のまわりは皮膚が薄く、強い薬を長く使うと皮膚が薄くなったり、カビが増えたりして、かえって治りにくくなることがあります。2週間ほど使っても変わらない場合はご相談ください。
掻きすぎて黒ずんでしまいました。元に戻りますか?
掻くことをやめて皮膚が落ち着けば、時間をかけて薄くなっていくことが多いものです。まずはかゆみそのものを断つことを優先します。
かゆみが夜だけ強いのはなぜですか?
体が温まると皮膚の血流が増え、かゆみを感じやすくなるためです。日中の緊張がとけたタイミングでかゆみが強くなるのも、この症状によくみられる特徴です。
痔があるとかゆくなりますか?
なることがあります。いぼ痔や肛門ポリープがあると分泌物が出て皮膚を刺激しますし、脱出があると便が残りやすくなります。かゆみだけのつもりで受診されて、痔が見つかることは珍しくありません。
診察では何をしますか。恥ずかしいのですが。
問診で経過をうかがい、肛門の状態を目で見て確認します。必要に応じて指での診察を行います。左側を下にした横向きの姿勢で、必要な部分以外はタオルで覆いますので、体が見えている時間はごくわずかです。
女性の医師に診てもらえますか?
当院は女性専門の大腸肛門科で、医師・看護師・受付まですべて女性です。男性の患者さまもいらっしゃいませんので、待合室で顔を合わせることもありません。
おしりのかゆみは、我慢する症状ではありません
「こんなことで受診してもいいのかな」とためらう方がとても多い症状です。けれど、かゆみは夜の眠りを妨げ、日中の集中力も奪います。原因がはっきりすれば、対処はそれほど難しくありません。浜松市のAico(あいこ)レディースクリニックは女性専門の大腸肛門科です。どうぞお気軽にご相談ください。
この記事の監修
Aico(あいこ)レディースクリニック 院長 医学博士
- 日本外科学会 専門医・指導医
- 日本大腸肛門病学会 専門医・指導医・評議員
- 日本臨床肛門病学会 専門医・指導医
- 日本消化器外科学会 専門医・指導医
- 日本消化器内視鏡学会 専門医
- 日本がん治療認定医
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、症状や治療効果には個人差があります。気になる症状がある場合は医師にご相談ください。



























